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請負契約書の最低限

この記事の内容
  1. 結論:何も書かなければ、著作権は作った側に残る
  2. 決め方は3つ:譲渡・独占的な許諾・非独占の許諾
  3. 「譲渡する」と書いても、残るものが2つある
  4. 受注者が守るものは「元から持っているもの」を分けて書く
  5. 権利が移るのは「いつ」か:報酬の支払い後にする
  6. そのまま貼れる文例:著作権条項(譲渡する場合)
  7. 契約書に入れる前の確認チェックリスト
  8. 発注する側が事業者なら、書面で条件を示す義務もある
  9. 次にやること

ホームページ、ロゴ、記事、プログラムなどを請け負って納める人と、それを頼む人に向けて書く。請負契約書のなかで、いちばん後から揉めやすい「著作権は誰のものか」の条項を、最低限どう書けばよいかに答える。最後に、そのまま貼れる条項の文例と、契約前に確かめる□のチェックリストを付ける。

口約束や、報酬と納期だけのメールで始めてしまった人もいると思う。それは珍しくない。あとから条項を足すことはできるので、今日整えれば間に合う。

結論:何も書かなければ、著作権は作った側に残る

先に、ここを押さえてほしい。

  • 著作物を作った人が著作者で、著作者は著作権を持つ(著作権法17条1項)
  • 著作権を持つために、登録や届け出は要らない(同17条2項)
  • 会社が従業員に作らせた場合は、一定の条件のもとで、会社が著作者になる決まりがある(同15条)。だが、請負で頼んだ外部の人は従業員ではない。一般には、この決まりは使えない

(条文はe-Govの法令検索と、文化庁「著作権テキスト」で確認した。2026年10月2日確認)

つまり、代金を全額払っても、契約書に何も書いていなければ、著作権は作った側(受注者)に残る、というのが基本の考え方だ。頼んだ側は、納品物を使うことはできるが、どこまで使ってよいか(改造していいか、他の媒体に流用していいか、他社に渡していいか)は、書いていないと決まらない。

なお、著作権が生まれるのは、著作権法上の「著作物」(思想又は感情を創作的に表現したもの。同2条1項1号)に限る。ありふれた表現や、アイデアそのものは、著作物にあたらないことが多い。この記事では、成果物が著作物にあたる場合を前提にする。

決め方は3つ:譲渡・独占的な許諾・非独占の許諾

条項の選び方は、大きく3つに分かれる。

決め方 著作権の持ち主 受注者があとで同じものを使えるか 向いている場面
A 譲渡 発注者に移る 契約で認めない限り使えない ロゴ、自社サイト、自社専用のプログラム。発注者が自由に改造・売却したい
B 独占的な利用許諾 受注者のまま 使えない(発注者だけが使える) 権利は渡したくないが、発注者以外に使わせたくもない
C 非独占の利用許諾 受注者のまま 使える 汎用のテンプレート、素材、使い回しが前提の成果物

利用許諾(他人に著作物を使わせる許可)は、著作権法63条に定めがある。譲渡は同61条1項だ。

どれが正しい、という話ではない。発注者が「その成果物で何をしたいか」と、受注者が「同じ手法や素材をほかの仕事に使いたいか」で決まる。迷うなら、価格の話と合わせて決めるのがよい。権利をぜんぶ渡す(A)なら、その分を報酬に織り込むか、別に書く。

「譲渡する」と書いても、残るものが2つある

Aを選ぶ人がいちばん踏みやすい点を、2つ挙げる。

1つ目:翻案権など(27条・28条)は、書かないと受注者に残ったと推定される

著作権法61条2項は、譲渡の契約で27条・28条に定める権利が「譲渡の目的として特掲されていない」と、これらの権利は譲った側に留保されたものと推定する、と定めている。27条は、翻訳・編曲・変形・翻案(作り変えること)の権利、28条は、作り変えられた作品を、元の作者がさらに使う権利だ。

「著作権をすべて譲渡する」とだけ書くと、この2つは入っていないと見られる余地がある。発注者があとで改造したり、バージョンアップしたりする予定なら、条文で名指しして書く必要がある。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」も、二次的著作物に関する権利(27条・28条)まで譲渡の対象にするなら、その旨を契約書に明記するよう案内している(2026年10月2日確認)。

2つ目:著作者人格権は、譲渡できない(59条)

著作者人格権は、作った人の名誉や気持ちを守る権利で、著作権法59条により、著作者だけのものとされ、譲渡できない。含まれるのは、公表するかどうかを決める権利(18条)、名前を出すかどうかを決める権利(19条)、意に反して内容を変えられない権利(20条)だ。

だから、譲渡を受けた発注者は、著作権は持っていても、「勝手に改造すると、受注者の人格権を侵す」という状況が残りうる。実務では、契約書に「受注者は著作者人格権を行使しない」と書いておくことが多い。これは法律で決まった書き方ではなく、契約で決める約束ごとだ。

受注者が守るものは「元から持っているもの」を分けて書く

Aで全部渡す契約でも、受注者が仕事の前から持っていたものまで渡す必要はない。書かないと、境目が分からなくなる。

  • 受注者が以前から持つ、テンプレート、ライブラリ、ひな形、ノウハウ
  • 複数の仕事に使い回すための、共通の部品

これらは「受注者に残す」と明記し、発注者には「成果物の一部として使う権利」を与える、という形にすると、双方が安心して使える。

逆に、発注者が用意した写真、ロゴ、文章、データは、発注者の側に権利がある(または、第三者から使う許可を得ている)はずのものだ。それが第三者の権利を侵していても、受注者が責任を負わなくて済むよう、「発注者が用意した素材の権利は発注者が確認する」旨を1行入れておく。

権利が移るのは「いつ」か:報酬の支払い後にする

Aで譲渡する場合、移る時期を書かないと、「納品した時点で移った」のか、「払ってもらってから移る」のかが曖昧になる。

受注者にとって安全なのは、報酬の全額が支払われた時点で移る、という書き方だ。払われないまま納品物だけが使われる状況を避けられる。発注者にとっても、払えば確実に自分のものになるので、不利ではない。

なお、著作権の移転は、文化庁への登録をしないと第三者に対抗できない(著作権法77条1号)。ただし、契約の当事者同士では、登録なしでも移転の効力がある。二人の間の約束ごとを決める、という目的なら、まず契約書を整えるのが先だ。

そのまま貼れる文例:著作権条項(譲渡する場合)

Aで、発注者に譲渡する場合の条項の例だ。会社名や金額、日付は自分の案件に合わせて置き換える。

第○条(著作権の帰属)
1. 本契約に基づき受注者が作成した成果物(以下「本件成果物」という。)に関する
   著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)は、発注者が
   受注者に対し、本契約に定める報酬の全額を支払った時に、受注者から発注者に
   移転する。
2. 受注者は、発注者及び発注者が許諾した第三者に対し、本件成果物について
   著作者人格権を行使しない。
3. 前2項にかかわらず、受注者が本契約の締結前から保有していた、又は本契約と
   無関係に作成した著作物(テンプレート、ライブラリ、ノウハウ等を含む。)の
   著作権は、受注者に留保される。受注者は、発注者に対し、本件成果物の利用に
   必要な範囲で、これらを非独占的に利用することを許諾する。
4. 発注者が受注者に提供した素材(文章、画像、データ等)の権利は、発注者に
   帰属する。発注者は、当該素材が第三者の権利を侵害しないことを確認する。

権利を渡さず、使わせるだけの契約(BやC)にするなら、第1項を次のように置き換える。

1. 本件成果物の著作権は、受注者に帰属する。受注者は、発注者に対し、
   本件成果物を、次の範囲で【独占的/非独占的】に利用することを許諾する。
   (利用の範囲)自社ホームページでの掲載、及びそれに付随する複製・改変

括弧内は、実際の利用範囲に書き換える。「どこで」「どの媒体で」「いつまで」の3つを入れると、あとで揉めにくい。

契約書に入れる前の確認チェックリスト

契約書を出す前、または受け取ったときに、次を1つずつ確かめてほしい。

□ 成果物の著作権を「譲渡」するのか「利用を許諾」するのか、どちらかが書かれている □ 譲渡なら、著作権法27条・28条に規定する権利を含む、と名指しされている □ 著作者人格権を行使しない旨が書かれている □ 権利が移る時期(報酬の全額の支払い後、など)が書かれている □ 受注者が元から持つ素材・ノウハウが、成果物に含まれていても受注者に残る、と書かれている □ 発注者が渡す素材の権利について、責任の所在が書かれている □ 許諾にする場合は、利用の範囲(場所・媒体・期間)が書かれている □ 報酬が、権利の扱い(譲渡か許諾か)と釣り合う額になっている □ 契約書を、双方が記名して1通ずつ持っている(メールのやり取りでもよいが、条項を本文に書く)

発注する側が事業者なら、書面で条件を示す義務もある

フリーランス保護の法律(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。2024年11月1日施行。公正取引委員会・厚生労働省の資料で確認)の3条は、業務を委託した事業者が、相手方に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法(メールなど)で示すことを求めている。従業員を雇わずに働く個人などに仕事を頼む事業者は、この対象になりうる。当てはまるかどうかは、条文(2条・3条)で確かめてほしい。

公正取引委員会・厚生労働省の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(2024年5月31日、2025年10月1日改正)は、成果物に知的財産権が生じ、その譲渡や許諾を受けたいときは、「給付の内容」の一部として譲渡・許諾の範囲を明確に書くよう求めている。使う目的の範囲を超えて譲渡・許諾させるなら、その対価を報酬に含める必要がある、とも書かれている(2026年10月2日確認)。

だから、「給付の内容」に成果物だけでなく権利の扱いも書いておけば、あとで「そんな話は聞いていない」となりにくい。受注者の側からも、書面を求める理由になる。

次にやること

今、進めている案件の契約書(またはメールの依頼文)を開いて、上のチェックリストの□を上から順に確かめる。1つでも欠けていれば、文例の第○条をそのまま貼って、相手に「この形で確認させてください」と送る。まずは、著作権を譲渡するのか、許諾なのか、それだけを決めれば、条項の8割は決まる。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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