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建設業の法人化

この記事の内容
  1. 結論:法人の常勤役員1人が、経営の経験年数を満たしていればよい
  2. 一人の経験だけで満たす3つの型
  3. 補佐する人を置く2つの型は、一人の会社には向きにくい
  4. 個人事業主だった年数は、経験に数えられるのか
  5. 計算例:経験が5年に届くかを、月で数える
  6. 5年に届かなくても、そこで終わりではない
  7. チェックリスト:法人化の日を決める前に確かめる
  8. 次にやること

建設業で個人事業主をしている人が法人化するとき、建設業許可の審査で最初にぶつかるのが「経営業務管理責任者」の要件だ。この記事は、許可を持って一人で(または少人数で)やってきて、これから法人にする人に向けて、いまの制度で何が問われるか、個人事業主だった年数は数えられるか、を整理する。最後に、経験年数が5年に届くかを仮の数字で計算する。

結論:法人の常勤役員1人が、経営の経験年数を満たしていればよい

先に、呼び名の話をしておく。「経営業務管理責任者」は、2020年(令和2年)10月の建設業法の改正より前に使われていた呼び方だ。いまの法律(建設業法7条1号)は、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」という言い方をしていて、国土交通省の資料では、法人なら常勤役員等の1人、個人なら本人または支配人の1人が、この基準を満たす必要がある、と書かれている(国土交通省「許可の要件」、2026年9月21日確認)。

2020年10月より前 2020年10月以降
呼び方 経営業務の管理責任者 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者(常勤役員等)
満たし方 1人の経験年数で満たす 1人の経験年数、または経験のある役員+補佐する人の組み合わせ

なくなったわけではない。従来の満たし方は残ったまま、別の満たし方が増えた、というのが正しい理解だ(複数の行政書士事務所の解説、2026年9月21日確認)。

法人化して許可を引き継ぐ場合、承継の認可申請の審査は、建設業許可の新規申請と同じ内容で行われる(行政書士事務所の解説。国土交通省関東地方整備局の資料でも承継の事前認可を説明しているが、PDFの本文はこの記事の作成時に読み取れなかった。2026年9月21日確認)。つまり、法人になった側が、この要件を自分で満たしている必要がある。

一人の経験だけで満たす3つの型

国土交通省の資料に載っている、常勤役員等の「1人の経験」だけで満たせる型は次の3つだ。

型 必要な経験
1 建設業に関し、5年以上、経営業務の管理責任者としての経験
2 建設業に関し、5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験
3 建設業に関し、6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位として、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験

個人事業主として自分で建設業を営んできた人は、ふつう型1にあたる。従業員のいない一人親方の法人化なら、この型で判断するのが基本になる。

補佐する人を置く2つの型は、一人の会社には向きにくい

もう一つの満たし方は、経験のある常勤役員等と、それを直接補佐する人を組み合わせる方法だ。

型 常勤役員等の経験 追加で必要なもの
4-1 建設業に関し2年以上、役員等としての経験。かつ、5年以上、役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務運営の担当に限る)としての経験 常勤役員等を直接補佐する人
4-2 5年以上、役員等としての経験(建設業以外の業種を含む)。かつ、建設業に関し2年以上、役員等としての経験 同上

補佐する人は、財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれで5年以上の経験がある人、とされている(国土交通省「許可の要件」、2026年9月21日確認)。社長1人だけの会社では、補佐者の人数と経験の条件を満たしにくい。だからこの型は、人を雇い始めてから考えることが多い。

個人事業主だった年数は、経験に数えられるのか

数えられる。経営業務の管理の経験を証明する書類として、個人事業主の場合は次のものが挙げられている(マネーフォワード クラウド建設業の解説、2026年9月21日確認)。

  • 経験期間分の確定申告書(第一表と所得金額計算書)
  • 経験期間分の工事請負契約書、注文書・請書、請求書など

経験の年数に見合う期間の分を、そろえて出すことになる。さらに、いま常勤で働いていることを示す書類として、個人事業主の場合は国民健康保険被保険者証の写しなどが挙げられている。

注意が2つある。1つ目は、許可を受けていない期間の扱いだ。国土交通省「許可の要件」にはこの点の明記がないが、複数の行政書士事務所の解説では、500万円未満の軽微な工事だけを請けていた(許可のいらない)期間も、その期間分の契約書・注文書などの書類を揃えれば経験に数えられる、という扱いで一致している(複数の行政書士事務所の解説、2026年9月26日確認)。書類が揃うかどうかは実際に窓口で見てもらわないと確定しないので、許可を取る前の年数を足そうとしているなら、窓口で先に聞く。2つ目は、書類の求め方が、許可を出す都道府県によって違うことだ。手引きの版も更新されるので、最新のものを窓口で受け取る。

計算例:経験が5年に届くかを、月で数える

法人化を予定している人の、仮の数字で計算する。

前提(すべて仮置き):

  • 個人事業主として、許可を受けて建設業を営んできた期間を数える(許可のない期間は数えない)
  • 法人設立は2026年10月を予定している
  • 型1(5年以上)で判断する
  • 期間は、開始月から2026年9月まで、月単位で数える(月の数え方や重なる期間の扱いは窓口の手引きで確認する)
許可を受けた月 2026年9月までの期間 5年に届くか
Aさん 2020年8月 6年2か月(74か月) 届く(60か月以上)
Bさん 2023年4月 3年6か月(42か月) 届かない(あと18か月)

Bさんは、5年に届くのが2028年3月末になる。この時点まで個人のまま続ける、経験のある人を役員に迎える、補佐者を置く型を検討する、のどれかを、法人化の日を決める前に選ぶことになる。どれを選ぶかは、窓口か行政書士に、自分の経歴と書類を見せて相談する。

5年に届かなくても、そこで終わりではない

Bさんのような数字が出ると、法人化そのものを諦めたくなるかもしれない。ただ、これは「許可を法人に引き継ぐ道が、いまは狭い」という話であって、法人化をやめる話ではない。

そもそも、500万円未満の工事(建築一式工事は1,500万円未満など)だけを請けているなら、許可は要らない(建設業法施行令1条の2。別記事「一人親方の法人化|建設業許可と社会保険の変わり方」で整理した)。許可を持っていない人は、この要件が問われる場面がまだ来ていない。

許可を持っている人が、経験年数の不足で足を止めるのは、たいてい書類を数えてみて初めてわかる。数えた結果が悪くても、選べる道は上に挙げた3つ残っている。

チェックリスト:法人化の日を決める前に確かめる

□ 自分が持っている許可の業種と、許可を受けた年月日を、許可通知書で確かめた □ 個人事業主として、許可を受けて営んできた期間を、月単位で数えた(5年=60か月に届くか) □ 経験期間分の確定申告書(第一表と所得金額計算書)が、手元にそろっているか確かめた □ 経験期間分の工事請負契約書・注文書・請書・請求書が、手元にあるか確かめた □ 法人の常勤役員等になる人(自分)が、常勤であることを示す書類を確かめた □ 従業員や、経営に関わってきた人がいるなら、補佐者の型が使えるかを窓口で聞くつもりにした □ 許可を出している窓口に、承継の事前認可の申請期限を聞いた(法人設立日を決める前に)

すべてを一度に埋めなくていい。まず1つ目と2つ目だけ、今日やる。年数の数え直しは、通知書と申告書が手元にあれば、その場でできる。

次にやること

許可通知書を出して、許可を受けた年月日を確かめ、そこから2026年9月までが何か月あるかを数える。60か月に届いているかどうかが、この後の動き方を決める。


出どころ(日付は各項目に記載):

  • 国土交通省「建設産業・不動産業:許可の要件」(経営業務の管理に関する型1〜3・4-1・4-2、補佐者の条件、法人は常勤役員等1人・個人は本人または支配人1人)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html(2026年9月21日確認、2026年9月26日再確認)
  • 国土交通省「建設産業・不動産業:建設業の許可とは」「軽微な工事(リフォーム工事等)に関する」(軽微な建設工事の基準。500万円未満・建築一式工事は1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事。根拠は建設業法施行令1条の2)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html https://www.mlit.go.jp/common/001132800.pdf(2026年9月26日確認)
  • マネーフォワード クラウド「建設業許可の経営管理責任者の要件とは?」(個人事業主の経験の証明書類、常勤性の確認書類)https://biz.moneyforward.com/construction/basic/70960/(2026年9月21日確認、2026年9月26日再確認)
  • 国土交通省関東地方整備局「建設業許可の事業承継・相続について(法第17条の2、17条の3)」(承継の事前認可。PDFの本文は機械では読み取れず、内容は行政書士事務所の解説で確認した)https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf(2026年9月21日確認、2026年9月26日にも再度読み取りを試みたが不可)
  • 経営業務の管理責任者が廃止ではなく、満たし方が増えたという整理: 建設業許可.net、行政書士法人ストレートなどの解説(2026年9月21日確認、2026年9月26日再確認)
  • 許可のいらない軽微な工事だけを請けていた期間も、書類を揃えれば経営業務の経験に算入できるという整理: 建設業許可サポートセンター、行政書士法人オフィス align などの解説 https://www.k-kyoka.com/kenkyo/keiseki.html(2026年9月26日確認)

この記事に、筆者本人の実体験はない。調査した範囲の内容を整理したものである。許可の判断は個別の事情で変わるので、実際の手続きは許可を出している都道府県または国土交通省の窓口、行政書士にご確認ください。

当サイト運営者

会社を辞めて、会社をつくる準備をしている当事者です

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。2026年に退職し、いまは求職活動と並行して、会社を立ち上げる準備を検討している段階です。まだ登記はしていません。調べて確かめたことだけを書き、済んでいない手続きは「これから」と正直に書きます。体験のふりをしません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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