会社設立日の決め方
- 株式会社・合同会社とも、設立の登記をした日が会社の成立日になる(会社法49条・579条)
- 六曜(大安・仏滅等)は暦注であり法律上の根拠はなく、法務局も六曜による受付制限を設けていない
- 登記所(法務局)は土日・国民の祝日・12月29日〜1月3日が休日で、その日を設立日にすることはできない(行政機関の休日に関する法律第1条)
- 健康保険・厚生年金保険の保険料は資格を取得した月から発生し、月の途中で取得しても日割りにならない(月単位の原則。日本年金機構の説明による)
- 資本金1,000万円未満の新設法人は原則として設立第1期・第2期の消費税が免除され、免税期間の長さは設立日と決算月の組み合わせで変わる(消費税法12条の2第1項)
この記事の内容
この記事は、会社設立日をいつにすればいいか決めかねている人に向けて書いています。 結論から言うと、大安・仏滅といった六曜には法律上の意味は一切なく、選んでも選ばなくても登記手続きに何の影響もありません。一方で、①登記所が開いている日でなければ設立日にできない、②社会保険料が月単位で発生するため月末近くの設立は損をしやすい、③消費税の免税期間の長さが変わる、という3つは、実際の手続き・金額に効いてくる実利です。以下、この3つを中心に整理します。
- 大安や仏滅で選んでいいのか、法的な意味があるのか分からない
- なぜ「毎月1日」に会社を作る人が多いのか、理由を知らない
- 土日や祝日を設立日にできるのか分からない
結論:設立日=登記申請日|六曜は関係ない
会社の設立日は、法務局(登記所)に設立の登記を申請した日です(会社法49条・579条)。占いや縁起で決める余地があるのは「どの日に登記申請するか」という1点だけで、大安を選んでも仏滅を選んでも、登記手続きの中身・審査の速さ・登録免許税の額はまったく変わりません。
実際に金額や手続きに効いてくるのは、六曜ではなく次の3つです。 1. 登記所が開いている日でなければ、そもそも設立日にできない 2. 社会保険料は月単位で発生するため、月のどこで設立するかで負担額が変わる 3. 消費税の免税期間の長さが、設立日と決算月の組み合わせで変わる
この記事では、この3つを中心に整理します。
会社の設立日とは何か(会社法49条・579条)
会社法は、株式会社について「その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています(会社法49条)。合同会社を含む持分会社についても同様の規定があります(会社法579条)。つまり、定款を作った日でも、資本金を払い込んだ日でもなく、法務局が設立の登記を受け付けた日が会社の誕生日になります。
登記の申請自体は、窓口への持ち込みのほか、郵送・オンライン(登記・供託オンライン申請システム)でも行えます。ただし、いずれの方法でも、登記所が受け付ける日が設立日になる点は変わりません。オンライン申請システム自体は休日も稼働していますが、休日または平日17時15分以降に送信した申請データは、送信した日の翌業務日に登記所で受け付けられる運用です(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
大安・仏滅を選ぶことに法律上の意味はあるか
大安・仏滅・友引などの六曜は、暦の上の吉凶を表す暦注で、江戸時代以降に広まった民間の習慣です。法律上の根拠は一切なく、商業登記法・会社法のどこにも六曜に関する規定はありません。法務局が「大安の日は受付を優先する」といった案内をしている事実もありません。
縁起を担ぎたい、家族や取引先への説明として区切りが良い、という理由で大安を選ぶこと自体は問題ありませんが、それによって登記の審査が有利になったり、費用が変わったりすることはないという点は押さえておくべきです。
設立日にできない日がある(登記所の休業日)
大安・仏滅より先に確認すべきなのは、そもそもその日が登記所の開いている日かどうかです。行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条では、官公署の休日を次のように定めています。
- 日曜日及び土曜日
- 国民の祝日に関する法律に規定する休日
- 12月29日から翌年1月3日までの日
登記所(法務局)もこの休日には窓口が閉まっているため、土日・祝日・年末年始をそのまま設立日にすることはできません。窓口申請・郵送申請はもちろん、オンライン申請でも、休日に送信したデータは法務局の翌開庁日に受け付けられるのが一般的な運用です。「1日に設立したい」と決めていても、その月の1日が日曜日であれば、実際の設立日は翌営業日にずれます。
社会保険料で損しないための日付の考え方
法人を設立し、代表者が常勤で報酬を受け取る場合、健康保険・厚生年金保険への加入は一人社長でも義務です(詳しくは「[会社設立後の社会保険手続き]」の記事で整理しています)。この社会保険料の計算には、実利として効いてくる次のルールがあります。
健康保険・厚生年金保険の保険料は、資格を取得した月から発生し、月の途中で取得しても日割りにはなりません。日本年金機構は「保険料は月単位で計算しますので、資格取得した月の保険料から支払う必要があります」と公式に説明しています(日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」)。月単位計算の根拠条文は、健康保険料については健康保険法第156条(被保険者の保険料額は各月につき定める旨の規定)、厚生年金保険料については厚生年金保険法第81条第2項(「保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする」との規定)です。解説記事でよく見る「厚生年金保険法第19条」という表記は、実際には「被保険者期間の計算」(資格取得月から喪失月の前月までを算入する規定)を定めた条文で、保険料そのものの根拠条文ではないため不正確です(条文は厚生労働省の公表資料・法令データベースで確認。e-Govの条文原文そのものへの到達はできていません。2026年9月確認)。
つまり、月末近くに会社を設立して社会保険の資格を取得すると、その月の稼働がほとんど無くても、その月の1か月分の保険料がまるまる発生します。逆に、月初に設立すれば、その月から丸ごと事業活動に使える期間になります。「毎月1日」に会社を作る起業家が多いと語られることがありますが、これを裏付ける公的な統計は見当たりませんでした。少なくとも、月初の設立が月単位の保険料計算のうえで不利にならない選び方であることは、上記のルールから言えます。
ただし、社会保険の資格取得日は「会社の設立日」そのものではなく、「役員報酬の支払いを開始した日(常勤の使用関係が始まった日)」で判断されます。設立してもすぐに報酬を発生させない場合は、資格取得日は後ろにずれます。設立日だけで自動的に決まるわけではない点に注意してください。
消費税の免税期間にも影響する
資本金1,000万円未満で会社を設立する場合、新設法人は原則として設立第1期・第2期の消費税納税義務が免除されます。これは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者を免税とする消費税法第9条第1項の原則が、新設法人にもそのまま適用されるためです。消費税法第12条の2第1項は「資本金1,000万円以上の新設法人には、この第9条第1項本文の免税規定を適用しない」と定める除外規定であり、資本金1,000万円未満の法人はこの除外に当たらないため、結果として第9条の原則どおり免税になります(国税庁タックスアンサーNo.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)。この免税期間の長さは、設立日と決算月の組み合わせで変わります。
事業年度は1年区切りのため、設立日から決算月までの期間(第1期)が長いほど、免税の恩恵を受けられる期間も長くなります。逆に、設立日のすぐ後に決算月を置いてしまうと、第1期はごく短い期間で終わり、免税枠を十分に使えないまま第1期が終了します。設立日単体では決まらず、決算月とセットで考える必要があるため、詳しい組み合わせ方は「[会社の決算月はいつにするか]」「[設立から2年間の消費税免税]」の記事で整理しています。
資本金の払込日との関係
設立登記の申請には、資本金の払込みを証明する書類(発起人の個人口座への振込の記録など)を添付します。払込みは、定款作成(または認証)の後、登記申請の前に行う必要があります。
払込日から登記申請日までの間隔について、法律で「◯日以内に登記しなければならない」という明確な期限は見当たりません。会社法911条1項が定める登記申請の期限は「設立時取締役等の調査が終了した日等から2週間以内」であり、起点は資本金の払込日ではないため、払込日を起点とする法定期限はそもそも存在しないと考えられます(会社法911条1項の条文を確認。2026年9月確認)。ただし、払込みから登記申請までの期間が空きすぎると、法務局の審査で払込みの実在性について確認を求められることがある、という言及は複数の司法書士事務所の解説記事で見られるものの、公的機関の公式資料では確認できませんでした(2026年9月確認)。設立日を決めるときは、払込みを済ませてから間を空けずに登記申請できる日程で逆算するのが実務上の考え方です。
比較表:設立日を選ぶときの判断基準
| 基準 | 効果の有無 | 内容 |
|---|---|---|
| 大安・仏滅などの六曜 | 効果なし | 法律上の根拠なし。審査・費用に影響しない |
| 登記所の開庁日かどうか | 必須条件 | 土日・祝日・年末年始(12/29〜1/3)は設立日にできない(行政機関の休日に関する法律第1条) |
| 月初か月末か | 実利あり | 社会保険料が月単位で発生するため、月末近くの設立は保険料負担が相対的に重くなりやすい |
| 決算月との組み合わせ | 実利あり | 消費税の免税期間(第1期・第2期)の長さが変わる |
| 資本金の払込日からの間隔 | 実務上の配慮 | 空きすぎると法務局から確認を求められることがある |
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。この記事を書いている2026年9月1日時点で、私自身はまだ合同会社の設立登記を完了しておらず、設立日も確定していません(「[合同会社設立の全手順]」の記事で書いた通り、定款の作成にも着手できていない段階です)。
そのため、この記事の内容は実際に設立日を決めた記録ではなく、会社法・行政機関の休日に関する法律・消費税法などの公開情報と、日本年金機構の一般的な説明を基にした「調査した範囲では」の整理です。実際に設立日を確定させたら、月初にしたか、決算月をどう組み合わせたか、その判断の内訳をこの記事に追記します。
次にやること
まず、希望する月の1日(または月初の数日)がカレンダー上で土日・祝日にあたっていないかを確認してください。 あたっている場合は、その直後の平日にずらすのが実利のある選び方です。そのうえで、資本金の払込みを済ませられる日程、決算月の候補(免税期間を最大化したいなら設立月の前月あたりが決算月の候補になります)と合わせて、登記申請日を逆算してください。大安・仏滅を気にすること自体は否定しませんが、それは開庁日と払込日程が確定したあとの「最後の一押し」として使う程度で十分です。
freee会社設立
※本記事は2026年9月時点の法令の公開情報と、筆者個人の状況に基づくものです。社会保険料の月単位計算の根拠条文は健康保険法第156条・厚生年金保険法第81条第2項です(月単位で保険料が発生すること自体は日本年金機構の公式説明で確認済みです)。実際の設立日の決定前には、司法書士・社会保険労務士・税理士などの専門家に確認してください。
出典 - 会社法 第49条(株式会社の成立)「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」 - 会社法 第579条(持分会社の成立)「持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」 - 行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条(官公署の休日:日曜日及び土曜日/国民の祝日に関する法律に規定する休日/12月29日から翌年1月3日までの日) - 消費税法 第9条第1項(小規模事業者に係る納税義務の免除)・第12条の2第1項(新設法人の納税義務の免除の特例。資本金1,000万円以上の新設法人を対象外とする規定) / 国税庁タックスアンサーNo.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm (資本金1,000万円未満の法人は設立第1期・第2期が免税対象である旨を確認。2026年9月確認) - 法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html (登記所の受付時間は8時30分〜17時15分。休日または平日17時15分以降に送信した申請データは翌業務日に受付される旨を確認。2026年9月確認) - 日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hihokensha/20140902-01.html (月単位で保険料が発生する旨の公式説明を確認。2026年9月確認) - 健康保険法第156条(被保険者の保険料額は各月につき定める旨の規定)・厚生年金保険法第81条第2項(「保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする」との規定)。厚生労働省の公表資料・法令データベース(労働新聞社「労働法検索」)で条文を確認(e-Govの条文原文そのものへの到達はできていません。2026年9月確認)。厚生年金保険法第19条は「被保険者期間の計算」の条文であり、保険料そのものを定めた条文ではないため、解説記事で見る「第19条」表記は不正確です - 資本金払込日から登記申請日までの法定期限の有無:会社法911条1項の条文を確認した結果、同項が定める2週間以内の期限は「設立時取締役等の調査終了日等」を起点とするものであり、払込日を起点とする法定期限は見当たりませんでした(2026年9月確認)。「間隔が空きすぎると法務局から確認を求められることがある」という言及は複数の司法書士事務所の解説記事で見られるものの、公的機関の公式資料では確認できていません - 「毎月1日に会社を作る人が多い」という言説を裏付ける公的統計:国税庁・法務省・日本年金機構の公表資料を探した範囲では見当たらず、確認できていません(2026年9月確認)