法人設立届出書と開業届の違い
- 法人設立届出書は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に納税地の所轄税務署へ提出する(法人税法148条、法人税法施行規則63条、国税庁No.5100)
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、従来は事業開始日から1か月以内が期限だったが、2026年1月1日以後に開始した事業についてはその年分の所得税確定申告期限までの提出でよいと改正された(所得税法229条の現行条文をe-Govで確認、国税庁A1-5で運用を確認、2026年9月確認)
- 最初から法人として設立する場合、個人事業主ではないため開業届は不要で、法人設立届出書だけを提出すればよい(所得税法229条、国税庁で確認、2026年9月確認)
- 両方の提出が必要になる典型例は個人事業主の法人成りで、個人事業側は「個人事業の開業・廃業等届出書」の廃業欄に、法人設立に伴う廃業である旨と設立法人名・代表者名・設立登記日を記載して提出し、法人側は別途新規に法人設立届出書を提出する(国税庁の届出書様式で確認)
- マイクロ法人と個人事業を並行して営む二刀流の場合も、法人設立届出書と個人事業側の開業届の両方が必要になる
- 法人設立届出書は税務署だけでなく都道府県税事務所・市区町村にも別途提出が必要で、期限は自治体ごとに異なる(東京都は設立の日以後15日以内、大阪府は設立の日から2か月以内。東京都主税局・大阪府の公式ページで確認、2026年9月確認)
この記事の内容
この記事は、会社を作る準備を進めるなかで「法人設立届出書」と「開業届」という2つの書類名を見つけ、自分はどちらを出せばいいのか、それとも両方出す必要があるのか判断できずに止まっている人に向けて書いています。 結論から言うと、この2つは対象が違う別の書類で、最初から法人として設立するだけなら開業届は不要です。両方が必要になるのは、個人事業主が法人成りする場合と、マイクロ法人と個人事業を並行する二刀流の場合の2パターンに限られます。以下、それぞれの違いと、両方出すケースを整理します。
- 「法人設立届出書」と「開業届」が別物だと知らず、どちらを出せばいいのか分からない
- 個人事業主から法人成りする予定だが、開業届はもう出しているので今さら何を出せばいいのか分からない
- 両方出す必要があるケースがあると聞いたが、自分がそれに当てはまるのか判断できない
結論:別の書類。両方出すのは「法人成り」と「二刀流」のときだけ
法人設立届出書は法人が出す書類、開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は個人事業主が出す書類です。対象になる主体がそもそも違うため、最初から法人として会社を設立するだけであれば、開業届を出す必要はありません。 開業届は「個人が新たに不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を開始したとき」に出す書類(所得税法229条、国税庁A1-5)で、国税庁の案内でも「個人は個人事業の開業・廃業等届出書、法人は法人設立届出書」と書き分けられています(国税庁「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」)。同族会社の役員が会社から受け取る役員給与は給与所得になります(国税庁タックスアンサーNo.1901)。
両方の提出が必要になるのは、①もともと個人事業主として開業届を出していた人が法人成りする場合、②法人を設立したあとも個人事業を並行して続ける「マイクロ法人と個人事業の二刀流」の場合、の2パターンに限られます。自分がどちらに当てはまるかで、やることが変わります。
「法人を作ったから開業届も出しておいた方が安全」という発想は不要です。 出すべき書類だけを出すことが基本です。
法人設立届出書とは何か|提出先・期限
法人設立届出書は、内国法人である普通法人や協同組合等を設立したときに、法人の基本情報(法人名・所在地・事業目的・資本金・事業年度など)を税務署に知らせるための書類です。提出期限は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内と定められています(法人税法第148条、法人税法施行規則第63条、国税庁)。提出先は納税地の所轄税務署で、定款・寄附行為・規則または規約等の写しを添付します(国税庁「C1-4 内国普通法人等の設立の届出」、国税庁No.5100)。条文上も、新たに設立された内国法人である普通法人は、設立の日以後2月以内に、定款の写しなどを添付した届出書を納税地の所轄税務署長に提出するとされています(法人税法148条、2026年9月にe-Govの条文で確認)。
法人設立届出書と同時に、設立後は青色申告承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書など複数の書類を税務署へ出す必要があります。全体の一覧と期限順の整理は設立後に税務署へ出す書類一覧、青色申告承認申請書だけを詳しく知りたい場合は法人の青色申告承認申請書|設立3ヶ月以内の期限に注意を参照してください。
開業届とは何か|提出先・期限(2026年からの改正に注意)
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、個人が新たに事業所得の生じる事業を開始したときに、納税地の所轄税務署へ提出する書類です(所得税法第229条)。提出期限には2026年に大きな変更がありました。 従来は事業開始の日から1か月以内が期限でしたが、令和8年(2026年)1月1日以後に事業を開始した場合は、その事業を開始した日の属する年分の所得税の確定申告期限まで(通常は翌年3月15日、期限が土日祝日にあたる場合はその翌日)に提出すればよいと改正されています。現行の所得税法229条は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」と定めており(2026年9月にe-Govの法令データで現行条文を確認)、この改正は令和5年法律第3号(所得税法等の一部を改正する法律)による(令和5年法律第3号自体の実在は国税庁公表資料で確認)。国税庁のA1-5「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」にも、提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と書かれています(2026年9月確認)。
期限が延びたのは開業届だけで、青色申告承認申請書の期限は変わっていません。 青色申告を初年度から使いたい場合は、別途「所得税の青色申告承認申請書」を、開業日が1月1日〜1月15日ならその年の3月15日まで、1月16日以後なら開業日から2か月以内に出す必要があります(所得税法144条、国税庁「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」。2026年9月に確認)。開業届の期限緩和を青色申告の期限と混同しないよう注意してください。
最初から法人を作るだけなら、開業届は不要
個人事業を一切営んでおらず、最初から法人として事業を始める場合、提出するのは法人設立届出書だけです。開業届は個人が不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を始めたときに出す書類なので(所得税法229条)、法人の代表者が法人からの役員給与(給与所得。国税庁タックスアンサーNo.1901)だけを受け取る場合には対象になりません。「会社を作ったのだから開業届も」と考えて両方を出そうとする必要はありません。個人事業主と法人どちらで始めるかそのものを迷っている場合は、個人事業主と法人どちらで始めるか|迷ったら見る3つの数字で判断軸を整理しています。
両方出す必要があるケース1:個人事業主が法人成りする場合
すでに個人事業主として開業届を出して事業をしていた人が、同じ事業を法人化(法人成り)する場合は、両方の手続きが必要になります。
| 主体 | 出す書類 | 内容 |
|---|---|---|
| 個人事業側 | 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業) | 開業届と同じ様式。「廃業」欄にチェックし、「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」の欄に、設立法人名・代表者名・法人納税地・設立登記日を記載する(国税庁の届出書様式で確認、2026年9月確認)。期限は廃業した年分の確定申告期限(所得税法229条、国税庁「廃業する場合」) |
| 法人側 | 法人設立届出書 | 新設法人として通常どおり提出する。提出期限は設立の日以後2か月以内(法人税法148条) |
個人事業の廃業側で必要になる届出は、廃業届だけではありません。青色申告のとりやめ届出書や消費税の事業廃止届出書、社会保険の切り替えなど、廃業時にまとめて確認すべき手続きは個人事業の廃業手続き|法人成り後にやることで整理しています。廃業側の期限も、開業届と同じ所得税法229条で定められています。国税庁の「廃業する場合」のページには、個人事業の廃業届の提出期限が「廃業した年分の所得税の確定申告期限」と示されています(2026年9月確認)。従来の廃業日から1か月以内という期限は、令和8年(2026年)1月1日以後に廃業した場合には当てはまりません。
両方出す必要があるケース2:マイクロ法人と個人事業の二刀流
法人を1つ作り、その一方で別の個人事業も並行して続ける「マイクロ法人と個人事業の二刀流」という働き方を選ぶ場合も、両方の届出が必要です。この場合は法人成りとは違い、個人事業を廃業するわけではないため、個人事業をこれから始めるなら「廃業」ではなく通常の「開業」として開業届を提出することになります(すでに開業届を出している個人事業を続けるだけなら、新たな提出は要りません)。法人側は法人設立届出書、個人事業側は開業届と、それぞれ独立した届出として出します。 二刀流で何を法人に寄せ、何を個人事業に残すかという設計自体はマイクロ法人と個人事業の二刀流|何を分けるかが本体で整理しています。
提出期限を数える計算例
計算例として、2026年10月1日に合同会社の設立登記が完了したケースで、期限を実際に数えてみます。
| 書類 | 起算日 | 期限の考え方 | 期限日の目安 |
|---|---|---|---|
| 法人設立届出書(税務署) | 2026年10月1日(設立登記の日) | 設立の日以後2か月以内(法人税法148条) | 2026年11月30日 |
| 都道府県税事務所への届出(東京23区の例) | 2026年10月1日 | 設立の日以後15日以内(東京都都税条例26条1項。東京都主税局の記載要領) | 2026年10月15日 |
| 青色申告承認申請書(税務署) | 2026年10月1日 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のうち早い日の前日まで(法人税法122条、国税庁No.5100) | 2026年12月31日 |
前提: 設立の日(10月1日)を1日目として数えています。青色申告承認申請書の行は、第1期の事業年度が3か月以上ある場合の日付です。第1期が3か月未満なら、事業年度終了の日の前日が期限になります。
期限日は起算日の解釈や祝日の有無によって前後することがあります。上の日付は目安として、実際の提出前に所轄税務署・都道府県税事務所へ確認してください。都道府県税事務所への期限がもっとも短くなりやすいため、法人設立届出書の期限だけを見て安心しないことがポイントです。
都道府県・市区町村への届出も別に必要
法人設立届出書は、税務署(国税)に出せば終わりではありません。都道府県税事務所、市区町村にも、それぞれ別の届出書を出す必要があります。 名称や期限は自治体ごとに異なります。例えば東京都では、法人を設立したら「法人設立・設置届出書」を設立の日以後15日以内に所管の都税事務所へ出します(東京都都税条例26条1項。東京都主税局。2026年9月確認)。23区内の法人は、市町村民税に当たる分も都民税として都税事務所に申告するため、都税事務所への届出が窓口になります(東京都主税局)。大阪府では「法人設立等申告書」を、法人設立の日から2か月以内に、事務所の所在地を担当する府税事務所へ出します(大阪府の公式ページ。2026年9月確認)。税務署への期限(2か月以内)より短い自治体があるため、法人設立届出書を出すタイミングで、都道府県・市区町村側の期限も同時に確認しておくことをおすすめします。
実体験について、正直に書きます
正直に書きます。個人事業主としての開業届も出していないため、この記事で書いた「両方出す必要があるケース」についても、自分自身の提出記録ではなく、国税庁の届出書様式・公開情報、e-Govの条文、東京都主税局・大阪府の公式ページをもとにした整理です。実際に設立登記が完了し、法人設立届出書を提出する段階になったら、実際にかかった手間や自治体窓口でのやり取りを、この記事に追記します。
両方出す必要があるか確認するチェックリスト
自分の状況を、次の項目で1つずつ確かめてください。
- □ 自分はこれから法人を設立するだけで、個人事業は営んでいない(営んだこともない)か確認した→ 該当するなら法人設立届出書だけでよい
- □ すでに開業届を出して個人事業主として活動しており、同じ事業を法人化しようとしているか確認した→ 該当するなら「個人事業の開業・廃業等届出書(廃業)」と「法人設立届出書」の両方が必要
- □ 法人を作ったあとも、別の個人事業を廃業せずに続ける予定か確認した→ 該当するなら「開業届(継続)」と「法人設立届出書」の両方が必要
- □ 法人設立届出書の提出期限(設立の日以後2か月以内)を確認した
- □ 開業届を新規に出す場合、2026年1月1日以後の開業なら期限は開業した年分の確定申告期限(通常は翌年3月15日)までであることを確認した
- □ 法人設立届出書について、税務署だけでなく都道府県税事務所・市区町村への届出も必要か、管轄の窓口に確認した
すべて確認できたら、次の「次にやること」に進んでください。
次にやること
まず、自分が「最初から法人を作るだけ」なのか、「個人事業から法人成りする」のか、「法人と個人事業を二刀流で続ける」のかを、上のチェックリストで特定してください。 特定できたら、法人設立届出書は設立の日以後2か月以内に所轄税務署へ、法人成りで個人事業を廃業する場合は開業届と同じ様式の「廃業」欄に法人設立に伴う旨を記載して提出します。開業届を新規に出す場合は、2026年1月1日以後の開業なら開業した年分の確定申告期限までに出します。都道府県税事務所・市区町村への届出は税務署より期限が短い自治体があるため、法人設立届出書と同じタイミングで管轄窓口に確認しておくと出し忘れを防げます。書類の作成に不安がある場合は、freee会社設立のようなクラウドサービスで届出書一式を作成する方法も検討してください。
※本記事は2026年9月に確認した国税庁の公開情報、e-Govの法人税法・所得税法の条文、東京都主税局・大阪府の公式ページをもとにした整理です。実際の手続き前には、所轄税務署・都道府県税事務所・市区町村役場、または税理士に最新の情報をご確認ください。この記事は一般的な整理であり、個別の税務相談の代わりにはなりません。
出典 - 法人税法第148条(内国普通法人等の設立の届出) - 法人税法施行規則第63条 - 法人税法第122条(青色申告の承認申請) - 所得税法第229条(開業等の届出) - No.5100 新設法人の届出書類|国税庁(設立の日以後2か月以内の提出期限を確認) - C1-4 内国普通法人等の設立の届出|国税庁 - A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁 - 個人事業の開業・廃業等届出書(様式)|国税庁(「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」欄を確認) - 個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき|国税庁(開業届の期限、青色申告承認申請書の期限、法人設立届出書の期限を確認) - 開業する場合|国税庁 - 廃業する場合|国税庁(廃業届の提出期限を確認) - No.1901 同族会社の役員で確定申告の必要な人|国税庁(役員給与は給与所得) - 所得税法第144条、第229条(e-Govの法令データで現行条文を確認)。2026年1月1日以後の開業に確定申告期限までの提出でよいとする改正は令和5年法律第3号(所得税法等の一部を改正する法律)による(法律自体の実在は国税庁公表資料で確認) - 法人事業税・法人都民税|東京都主税局、法人設立・設置届出書の記載要領|東京都主税局(都税事務所への届出は設立の日以後15日以内) - 法人府民税・事業税の法人設立等申告書|大阪府(設立の日から2か月以内)